大腸がん
大腸がんとは
大腸がんは、大腸の結腸または直腸で発生する悪性腫瘍のことです。
日本でのがんの死亡率は先進国の中でもトップに位置し、年々増加傾向にあります。
がん全体でみても男女ともに罹患率は1位、2021年のがん種別死亡率で男性2位、女性1位と上位にあり、男女とも50代以降から罹患する人が増加傾向にあります。
早期には自覚症状がないことが多く、進行していくと症状が現れてきます。
症状がないうちから検診を受けて早期発見できれば、治癒できる病気です。
症状
初期は自覚症状がありません。
個人差がありますが、進行すると以下のような症状があります。
- 血便
血が混じった便や便中に明らかな出血が見られる。 - 便秘や下痢
通常とは異なる排便パターンが続く。 - 腹痛
腹部の不快感や痛みが出現する。 - 腹部膨満感
腹部が膨らんでいるように感じる。 - 腹部の圧迫感
腹部に圧迫感や重さがあると感じる。 - 貧血
鉄欠乏性貧血による疲労感や倦怠感が現れる。 - 体重減少
無意識に体重が減少する。 - 脱力感
体がだるく、筋力が低下している感じがする。 - 腸閉塞
腫瘍が腸内を塞ぐことで、胃腸の動きに異常が生じる。 - 腹部のしこり
腹部に触れたときにしこりや腫れを感じることがある。
大腸がんの生存率
大腸がん5年生存率(2014~2015)
ステージⅠ期 | ステージⅡ期 | ステージⅢ期 | ステージⅣ期 |
---|---|---|---|
92.3% | 85.5% | 75.5% | 18.3% |
原因
主に遺伝的要因や生活習慣に関連しています。
食事での脂肪や肉の過剰摂取、野菜や食物繊維の不足、喫煙や過度の飲酒などがリスクの増加につながります。
また、一部の遺伝子変異も大腸がんの発症リスクを高めることがあります。
大腸がん検診について
40〜69歳を対象にした横浜市の大腸がん検診受診率は全国平均の44.2%よりも高く、43.5%となっています。※1
しかし、世界的にもまだまだ低受診率です。
症状がない、必要性を感じない、検診が億劫だなど様々な理由がありますが、症状が出ていないときだからこそ、検査で将来のがんリスクを低減しましょう。
- 国民生活基礎調査による都道府県別がん検診受診率データ(2019年)
横浜市のがん検診
横浜市のがん検診では1年に1回40歳以上を対象とした便潜血検査(無料)を行っております。
また自費診療にはなりますが、より詳しい検査ができる大腸内視鏡検査もございます。
当院の診断・治療法
内視鏡検査で組織の一部を採取し、病理検査を行います。
胃がんの治療に関しては連携医療機関に紹介させていただきます。
治療法には、ステージや転移の有無によって手術や内視鏡的治療、薬物療法などが選択されます。早期段階で発見された場合、内視鏡的治療で治療が可能です。
治療後の内視鏡は当院で行えますので、定期的な検査でフォローアップをいたしますのでご相談ください。
虚血性腸炎
虚血性腸炎とは
虚血性腸炎は、大腸の血流が低下することで起こる炎症や潰瘍がおこる疾患です。
通常、腸の組織は十分な血液供給を受けていますが、何らかの原因により血流が滞ることで、結腸の一部に血流障害が生じます。虚血性腸炎は、血管の狭窄や動脈硬化、血流の低下などが原因とされています。
症状
- 突然の腰痛
- 血便
- 腹部の膨満感
原因
虚血性腸炎の原因は、腸の血流が低下することにより起こります。
血管の狭窄や動脈硬化が主な原因とされており、加齢や、運動不足、揚げ物を好んで食べるなどの食事の偏りが、虚血性腸炎の発症の要因になるとされています。
また、便秘により強くいきむことで、腹圧がかかることで粘膜に血流障害が起きる場合があります。
当院の検査・治療法
採血や大腸内視鏡検査を行います。
必要に応じて連携医療機関に紹介させていただきます。
虚血性腸炎の状態や血流障害を確認するために、腹部のCT検査を行います。
ほとんどは一過性の症状ですので、短期間で治療できます。
炎症が強ければ入院が必要となります。
狭窄や懐死している状態であれば手術を行う場合があります。
炎症性腸疾患
炎症性腸疾患とは
炎症性腸疾患とは、潰瘍性大腸炎やクローン病といった慢性炎症を特徴とする腸の疾患の総称です。
腸が炎症することにより、下痢や腹痛、血便などの症状があります。
患者さんによって病変の範囲や病気の進行、重症度は異なります。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、大腸や直腸の粘膜に起こる慢性的な炎症です。治療方法がないため、厚生労働省に難病指定されている疾患です。
主な症状として、腹痛、下痢、血便、発熱などがあります。症状があったり、なかったりを繰り返す事が特徴です。また、貧血や体重減少も見られることがあります。
原因
潰瘍性大腸炎の具体的な原因は未だ明確には分かっていませんが、遺伝や免疫の異常が関与していると考えられています。また、腸内細菌との関連や環境因子も関係しているとされています。
診断と治療法
潰瘍性大腸炎の診断には、問診や身体検査のほか、血液検査や内視鏡検査などが行われます。
治療法は、症状にあわせて5‐ASA製剤や、ステロイド、免疫抑制剤、TNFα阻害剤などが使用されます。
また、食事の調整やストレスの管理も重要です。
クローン病
クローン病は、口から肛門までの消化管にびらん(ただれ)や炎症、潰瘍が生じます。
発生場所で多いのは大腸や小腸の粘膜で、原因は不明です。
治療方法がないため、厚生労働省に難病指定されている疾患です。
主な症状には、腹痛、下痢、発熱、体重減少などがあります。
炎症が進行すると腸に穴があいたり、膿がたまったりして激しい腹痛を伴います。
診断・治療
クローン病の診断には、血液検査や内視鏡検査、MRIで腸管の病変や粘膜の炎症が観察されます。また、組織の生検も行われることがあります。
治療法は症状がない状態を維持や改善、合併症の予防などを目指します。
薬物療法では、炎症を抑えるためにステロイドや免疫抑制剤、炎症を抑制するタンパク質であるTNF-α阻害剤が使用されます。
栄養療法では、クローン病患者の栄養摂取が制限されることから、栄養剤の摂取が必要となります。
重度の症状や合併症がある場合には、手術が選択されることもあります。
治療の選択や継続は、患者さんの病状や生活への影響、副作用のリスクなどを考慮しながら行います。また、生活のコントロールやストレスの軽減も重要です。