大腸内視鏡検査の組織採取でわかることは?発見できる疾患や検査後の注意点を解説

大腸内視鏡検査では、病変の組織を採取して詳しく検査する病理検査を行うことがあり、大腸の疾患に対する治療を計画するうえで重要な役割を果たします。では実際、病理検査でわかるのは具体的にどのような項目なのでしょうか。
この記事では、大腸内視鏡検査の組織採取の役割や判別が可能な疾患、病変の切除を行った場合の注意点などを紹介します。大腸内視鏡検査を受ける前にぜひご一読ください。
大腸内視鏡検査の組織採取でわかること

大腸内視鏡検査の組織採取は、病理検査を行うために必要で、以下の判定を目的として行われます。
- 大腸ポリープの良性・悪性の判断
- 疾患の種類の特定
- 大腸がんの深達度
それぞれの項目について紹介します。
大腸ポリープの良性・悪性の判断
大腸内視鏡検査で生検や切除されたポリープは、病理検査を行い、顕微鏡で詳しく調べることで良性・悪性の判断が行われます。
大腸ポリープには複数の種類があり、それぞれ性質やがん化のリスクが異なります。大腸ポリープの種類とがん化のリスクについては以下の通りです。
| 分類 | ポリープの種類 | 特徴 |
|---|---|---|
| 腫瘍性ポリープ | 腺腫 |
腺腫は、大腸ポリープのなかで比較的多くみられる種類です。 多くは良性とされていますが、サイズが大きくなるにつれてがん化のリスクが高まることが知られています。 一般的には、切除が検討されますが、最終的な判断はポリープの形状や患者さんの状態を踏まえて医師が行います。 |
| 非腫瘍性ポリープ | 炎症性ポリープ |
炎症によって粘膜が肥厚し、隆起して形成されるポリープです。 無症状の場合は経過観察となることもありますが、出血などを伴う可能性があるため、医師による慎重な判断が必要です。 |
| 過形成性ポリープ |
粘膜がなだらかに盛り上がった比較的小型のポリープです。 多くの場合、がん化の可能性は低いとされていますが、外見が似ている鋸歯状病変は癌化のリスクがあり注意が必要です。 |
|
| 過誤腫性ポリープ |
がん化のリスクは低いとされていますが、大きさによっては出血を伴うことがあります。 大腸内視鏡検査では、ポリープの切除だけでなく、病変の一部を採取して調べることで、がん化の有無や性質を評価します。 がん化の可能性が指摘されているポリープについては、早期に発見し、適切に対応することが重要とされています。そのため、良性と判断された場合でも、医師の判断により定期的な内視鏡検査が勧められることがあります。 |
大腸ポリープの多くは腫瘍性ポリープですが、その他にも種類があり、良性・悪性やがん化のリスクなどが異なります。
大腸内視鏡検査では、大腸ポリープや早期大腸がんを切除するだけではなく、病変の一部を詳しく検査してがん化の有無を判別します。がん化のリスクがある大腸ポリープや早期大腸がんは、早めの発見と治療が重要なため、良性のポリープでも経過観察のために定期的な大腸内視鏡検査が必要です。
疾患の種類の特定
病理検査は、疾患の種類を判断するための重要な検査のひとつです。
大腸がんのほか、厚生労働省が難病指定している潰瘍性大腸炎やクローン病などでも、病理検査が診断の参考として用いられます。内視鏡所見や症状が似ている疾患では、見た目だけで区別が難しい場合があるため、確定診断を目的として病理検査が行われることがあります。
大腸がんの深達度
大腸腫瘍を切除して、採取した大腸がんの組織を詳しく調べることで、がんの深達度(どこまで浸潤しているか)を評価します。大腸がんの深達度は、一般的に以下のように分類されます。
- Tis:がんが粘膜内にとどまっている
- T1:粘膜下層まで浸潤している
- T2:固有筋層まで浸潤している
- T3:固有筋層を越えて浸潤している
- T4:漿膜表面や他臓器に及んでいる
深達度が浅い場合には内視鏡による切除が検討されることがありますが、浸潤が深い場合には外科手術が必要となります。また、リンパ節転移が確認された場合には、再発リスクを考慮して、薬物療法や放射線療法が行われることがあります。
一般的に、早期に発見された大腸がんでは治療の選択肢が広がる場合がありますが、進行度や患者さんの状態によって治療内容や予後は異なります。このように、病理検査は治療方針を検討するうえで重要な役割を果たします。
組織採取でわかる下部消化管の疾患

病理検査によって診断や評価の参考となる下部消化管疾患には、以下のようなものがあります。
- 大腸がん
- 大腸ポリープ(大腸腺腫)
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
- 虚血性大腸炎
- 直腸潰瘍
※すべての疾患が病理検査のみで確定診断できるわけではなく、症状や他の検査結果を総合して医師が判断します。それぞれの疾患について解説します。
大腸がん
大腸がんは、大腸(盲腸・結腸・直腸)の粘膜に発生するがんで、日本人のがん罹患率のなかでも上位を占めるとされています。
40代から発症のリスクが高まり、50代になると急増する傾向がありますが、若い世代でもFAPが原因で発症する可能性があります。早期発見と治療で完治が見込めますが、自覚症状が現れにくく、長期間放置することで進行が早まり、治療が困難になる可能性があるがんです。確定診断と深達度の判断のために、病理検査が必要になります。
大腸ポリープ(大腸腺腫)
大腸ポリープは、キノコのように茎がある形のものもあれば、盛り上がりが少なく平坦に近い形のものもあります。詳しくは前述の通りですが、良性・悪性の判断やがん化のリスクを判別するために病理検査が必要です。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、炎症によって大腸粘膜にびらんや潰瘍が生じる慢性疾患です。
血便・腹痛・違和感・発熱・体重減少など、大腸がんと似た症状がみられる活動期と、症状が緩和される寛解期を繰り返しながら広がるため、一時的に治ったと感じるケースも少なくありません。しかし、炎症がひどく長期間続く場合は、がん化のリスクが高くなるとされています。
さまざまな要因が複雑に絡んで発症するとされていますが、明確な原因は不明です。大腸内視鏡検査と病理検査を組み合わせて、重症度の判定や治療方針の決定を行います。
クローン病
クローン病は、消化管のすべての部位に慢性的な炎症や潰瘍ができる、原因不明の疾患です。
好発部位は大腸や小腸で、断続的に炎症や潰瘍ができるのが特徴です。10代〜20代の若年層に多く、下痢・腹痛・発熱などの症状がみられます。初回診断時の病理検査と、定期的な大腸内視鏡による経過観察が重要です。
虚血性大腸炎
虚血性大腸炎とは、大腸への血液供給に障害が起こり、大腸粘膜が炎症を引き起こす疾患です。
主な症状は突発的な腹痛や下痢、血便などで、軽症の場合は安静を保つことで回復する見込みがありますが、強い炎症を伴う重度の状態では手術が必要になります。治療後も同じ場所に再発する可能性があるため、生活習慣や便通の改善によって腸への負担を軽減する工夫が大切です。
症状だけでは大腸がんやその他の炎症性腸疾患と区別することが難しいため、大腸内視鏡検査や病理検査によって診断することがあります。
直腸潰瘍
直腸潰瘍は直腸の内壁に起こる潰瘍で、炎症性腸疾患や感染性腸炎などの一環として生じることがあります。また高度な便秘で潰瘍になる場合があります。軽度の状態では自覚症状がないケースもありますが、進行すると腹痛や血便、便通異常など、大腸がんと類似する症状がみられます。
潰瘍の良性・悪性の判別や、原因となる疾患の診断のために病理検査が必要になるケースが多いです。
大腸内視鏡検査の組織採取は痛い?

大腸粘膜には痛覚神経がほとんどないため、組織採取自体で強い痛みを感じることは少ないとされていますが、感じ方には個人差があります。また、内視鏡操作による腸管の伸展や、送気による腹部の張りを不快に感じる場合があります。
これらの症状は一時的なことが多く、鎮静剤の使用や検査方法によって軽減される場合があります。
組織採取後に注意すべき症状
組織採取後に以下のような症状がみられる場合は、医療機関へ相談することが勧められます。
- 強い腹痛が続く
- 腹痛が徐々に悪化する
- 発熱がある
- 多量の出血がみられる
- 下痢や便秘が長く続く
これらは合併症の可能性が否定できないため、症状に応じた対応が必要です。夜間を問わず医療機関を受診してください。特に、処置を受けてから数日はトラブルに注意し、すぐに対処できるように遠方への外出は避けることが望ましいです。
大腸内視鏡検査の組織採取の結果はいつ出る?

内視鏡検査による所見は当日中に説明されることが多いですが、病理検査の結果は2〜3週間程度かかることが一般的です。結果が出るまでの期間は検査機関のスケジュールによっても異なり、具体的な日数は決まっていないため、おおよそどの程度かかるのかを事前に確認しておくと安心です。
大腸内視鏡検査で組織採取を行う場合の費用相場

大腸内視鏡検査と組織採取を行う場合の費用相場は、3割負担で約1〜3万円です。
その他、切除したポリープの数や鎮静剤の有無によっても料金が異なります。大腸内視鏡検査は、健康診断や人間ドックなど、症状がなく疾患の早期発見のために受ける場合は自費診療になるケースもあります。
大腸内視鏡検査で組織採取をしたあとの過ごし方

大腸内視鏡検査での組織採取後は、医師の指示に従い、以下の点に注意して過ごしましょう。
- 激しい運動や腹圧のかかる作業を控える
- 刺激物やアルコールを避ける
- 長時間の入浴やサウナを控える
- 消化の良い食事を心がける
- 便の状態を観察する
組織採取をしたあとは、切除を行った部位に負担がかかる行為や血行を促進する行為を控える必要があります。
同様の理由で、重いものを持つ行為(腹圧がかかることで出血のリスクも伴います)や高所での作業も危険なため避けてください。また、鎮静剤を使用した当日は、車・バイク・自転車などの運転は控えてください。症状に変化があった場合は、自己判断せず、医療機関に相談することが大切です。
まとめ
大腸内視鏡検査の組織採取は、病理検査を行って疾患の状態を詳しく判断するために重要です。切除の際に痛みを感じることは基本的にありませんが、痛みを含め検査後に気になる症状がみられた場合は、治療を受けたクリニックかお近くの医療機関を受診してください。
横浜駅前ひさゆき消化器内科・内視鏡クリニックでは、患者様の苦痛に配慮した日帰りの大腸ポリープ切除を行っております。通常の消化器内科や健康診断などの診療も行っているため、かかりつけの内科・大腸内視鏡の定期検査にぜひご利用ください。
記事監修者
横浜駅前ひさゆき消化器内科・内視鏡クリニック
院長・医学博士
久行 友和

経歴
- 2003年3月
昭和大学医学部卒業
その後昭和大学横浜市北部病院消化器センターとその関連病院勤務 - 2015年11月
昭和大学横浜市北部病院消化器センター 講師 - 2022年4月
昭和大学横浜市北部病院 人間ドック室 室長兼任 - 2023年11月
横浜駅前ひさゆき消化器内科・内視鏡クリニック 院長
資格
- 日本消化器内視鏡学会 学術評議員
- 日本消化器内視鏡学会 関東支部評議員
- 日本消化器内視鏡学会 指導医
- 日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
- 日本消化器病学会認定 消化器病専門医
- 日本内科学会 認定医
- 日本消化管学会認定 消化管専門医・指導医
- 日本医師会 認定産業医
- 日本大腸検査学会 評議員