胃カメラで鎮静剤は必要?メリット・デメリットや使用が推奨される方の特徴を紹介

胃カメラは、鼻や口からスコープを挿入し、上部消化管の内部を観察する検査です。胃カメラ検査に対して苦しいイメージを持つ方もいますが、鎮静剤を使用することで、痛みや息苦しさ、嘔吐反射などの不快感が和らぐ場合があります。
この記事では、胃カメラ検査における鎮静剤の必要性やメリット・デメリット、使用が検討される方の特徴について解説します。過去に胃カメラでつらい経験をした方や、初めて検査を受ける方は参考にしてください。
胃カメラは鎮静剤なしだとつらい?

胃カメラには、口から挿入する経口内視鏡と、鼻から挿入する経鼻内視鏡の2種類があります。鎮静剤を使用しない場合に感じやすいとされる不快感には、以下のようなものがあります。
経口の場合
経口内視鏡では、スコープが喉を通過する際に嘔吐反射や息苦しさを感じる方がいます。嘔吐反射は舌の付け根付近に刺激が加わることで起こる生理的反応で、えずくような感覚を伴うことがあります。また、口から器具を挿入することで、呼吸がしづらいと感じる場合もあります。
経鼻の場合
経鼻内視鏡では、鼻の奥の痛みや違和感、くしゃみや鼻水などの症状が出ることがあります。スコープは細く設計されていますが、鼻腔が狭い方や鼻に疾患がある方では不快感が強くなる場合があります。一般的に嘔吐反射は経口内視鏡より軽減される傾向がありますが、感じ方には個人差があります。
胃カメラで鎮静剤を使用するメリット

鎮静剤を使用することで、以下のような利点が考えられます。
- 検査中の不快感が和らぐ場合がある
- 検査時の緊張が軽減されることがある
- 心理的な負担が少なくなる可能性がある
それぞれのメリットについて解説します。
検査中の不快感が和らぐ場合がある
鎮静剤を使用することで、痛みや嘔吐反射、異物感などが軽減されることがあります。眠っているような状態で検査が進むため、検査中の記憶があいまいになる場合もあります。
検査時の緊張が軽減されることがある
検査中の緊張が和らぐことで、体のこわばりが少なくなり、医師が観察しやすくなる場合があります。その結果、検査が円滑に進むことがあります。
心理的な負担が少なくなる可能性がある
検査に対する不安や恐怖心が強い方にとって、鎮静剤の使用は心理的負担の軽減につながる場合があります。胃カメラは疾患の早期発見・治療のために定期的な検査が必要ですが、苦痛を伴うと考えると受診をためらってしまうケースもあるでしょう。つらくない胃カメラは検査のハードルを下げるとともに、「これなら受けられる」という体験にもなります。
胃カメラで鎮静剤を使用するデメリット

鎮静剤にはメリットだけでなく、以下のような注意点もあります。
- 検査後に一定時間の安静が必要
- 検査直後の飲食制限
- 副作用の可能性
それぞれのデメリットについて解説します。
検査後に一定時間の安静が必要
鎮静剤を使用した場合、検査後に院内で休憩が必要となることがあります。休憩時間は個人差や医療機関の方針によって異なります。クリニックにいる時間が長くなるほか、帰宅後の過ごし方にも制限がかかるため、鎮静剤を使用する場合はその後の予定を入れないほうが安心です。
検査直後の飲食制限
鎮静剤や喉の麻酔の影響が残っている間は、飲食を控える必要があります。飲食再開のタイミングは医師の指示に従いましょう。
副作用の可能性
鎮静剤には、眠気、ふらつき、血圧低下、呼吸状態の変化などが生じることがあります。検査中および検査後は、医師やスタッフが状態を確認しながら対応します。帰宅してからはなるべく安静に過ごし、気になる症状が見られた場合は検査を受けたクリニックに相談しましょう。
胃カメラで使用される鎮静剤の種類

胃カメラ検査で使用される鎮静剤には、以下のようなものがあります。
- ミダゾラム
- プロポフォール
- ペンタゾシン
それぞれの鎮静剤の特徴について詳しく解説します。
ミダゾラム
ミダゾラムは、即効性があり、作用時間が比較的短い鎮静剤です。検査後に一時的な記憶の抜け(前向性健忘)がみられる場合があります。閉塞隅角緑内障・重症筋無力症の方は、症状を悪化させるリスクがあることから使用できません。
プロポフォール
プロポフォールは、鎮静の深さを調整しやすい薬剤ですが、使用には専門的な管理が必要です。
ペンタゾシン
ペンタゾシンは、主に鎮痛目的で使用される薬剤で、検査時の不快感を和らげるために併用されることがあります。使用する薬剤は、体調や既往歴などを考慮して判断されます。
胃カメラで鎮静剤の使用が検討される方

以下のような方は、鎮静剤の使用が検討される場合があります。
- 過去の胃カメラで強い不快感を覚えた方
- 検査に対する不安や緊張が強い方
- 痛みに敏感な方
胃カメラは定期的な検査が重要であるため、鎮静剤を使用して苦痛を軽減する工夫が有効です。基本的に、経鼻内視鏡の場合は鎮静剤を使用しないクリニックが多い傾向があります。
鎮静剤なしの経鼻内視鏡でつらかった経験がある方は、鎮静剤と経口内視鏡の組み合わせを選択するか、鎮静剤ありの経鼻内視鏡を受けられるクリニックを検討しましょう。また、鎮静剤が効きにくい体質の方は、種類の検討や使用量の調整が必要になる可能性があるため、同様に事前に医師へ申告しましょう。鎮静剤の使用については、事前に医師と相談することが大切です。
鎮静剤の使用に注意が必要な方

以下に該当する方は、鎮静剤の使用について慎重な判断が必要です。該当する場合は、必ず事前に医師へ申告しましょう。
- 高齢の方
- 妊娠中・授乳中の方
- 特定の薬剤にアレルギーがある方
- 向精神薬を服用している方
- 当日に車・自転車などを運転する予定がある方
それぞれの理由について解説します。
高齢の方
胃カメラに年齢制限はありませんが、75歳以上の高齢の方は検査を受けるクリニックで鎮静剤の制限が設けられている場合があります。持病や常用薬が多い高齢の方もおり、これらの要因と鎮静剤の組み合わせが悪いケースも少なくありません。
また、身体的な衰えや体力の面で危険が生じると判断された場合は、検査自体を行えない可能性もあります。高齢で胃カメラが受けられない場合は、胃ABC検診やCT検査などの代替法を検討しましょう。
妊娠中・授乳中の方
妊娠中・授乳中は、鎮静剤の使用が制限されます。妊娠中の胃カメラは、妊娠の経過が良好かつ医師が必要と判断した場合に限られ、胎児への影響を考慮して鎮静剤は使用できません。万が一のことを考え、胃カメラは出産後に受けるのが望ましいです。
また、授乳中は母乳に移行する恐れがあるため、鎮静剤を使用した場合、一定期間は授乳を避ける必要があります。授乳中に胃カメラを受けたい場合は、鎮静剤なしでも苦痛が軽減できる経鼻内視鏡がおすすめです。
特定の薬剤にアレルギーがある方
胃カメラでよく使用されるリドカイン(キシロカイン)という麻酔薬でアレルギーを起こした経験がある方は、リドカインを使用できません。
リドカインは、喉にスプレーするか、喉に溜めてしばらく時間をおいて使用する麻酔薬です。稀にアレルギー反応を引き起こす恐れがあるため、リドカインアレルギーがある方は他の麻酔薬を使用する必要があります。この他、薬剤にアレルギーがある方は必ず事前に申告しましょう。
向精神薬を服用している方
以下のような向精神薬を服用中の方は、鎮静剤の効果が弱くなる可能性があるため、使用量の調整や、鎮静剤の種類の検討が必要です。
- 抗うつ薬
- 抗不安薬
- 睡眠薬
常用薬がある場合、事前の申告を忘れないようにしましょう。
当日に車・自転車などを運転する予定がある方
鎮静剤を使用すると、当日の車やバイク・自転車等の運転が禁止されます。鎮静剤の作用で眠気やふらつきがあると、判断力や反応速度に影響を及ぼし、危機回避能力が低下する可能性があるためです。
そのため、鎮静剤の使用を検討している方は、送迎を手配したり公共交通機関を使用したりして受診しましょう。自分で運転をして受診した方は、鎮静剤なしの検査を選択する、運転代行を利用する、検査を後日に延期するなどの対処をする必要があります。
鎮静剤と麻酔の違い

鎮静剤は、不安や緊張を和らげ、うとうとした状態で検査を受けやすくする目的で使用されます。一方、麻酔は、喉や鼻の感覚を鈍らせて不快感を軽減するために用いられます。胃カメラ検査では、表面麻酔が使用されることがありますが、全身麻酔が行われることは一般的ではありません。
鎮静剤なしの場合の内視鏡の選択

ここからは、鎮静剤を使用しない場合に、経口内視鏡と経鼻内視鏡がそれぞれおすすめなケースを紹介します。
経口内視鏡が選択されることがある方
鎮静剤なしの場合に、経鼻内視鏡よりも経口内視鏡が選択されることがある方は以下の通りです。
- 鼻からスコープを入れられない方
- より精度の高い検査を受けたい方
- 処置の幅を広げたい方
経口内視鏡は、喉に麻酔をすることで嘔吐反射が気になる方でも受けられる可能性があります。
鼻腔が狭い方や鼻血が出やすい方、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎の方は経鼻内視鏡が受けられないため、麻酔を使用した経口内視鏡がおすすめです。また経口内視鏡では太いスコープを使用でき、高性能なカメラを搭載したり、処置に必要な器具を内蔵したりできるため、より精度が高い検査を行える利点があります。
経鼻内視鏡が選択されることがある方
鎮静剤なしの場合に、経口内視鏡よりも経鼻内視鏡が選択されることがある方は以下の通りです。
- 検査中に医師との会話を希望する方
- 胃カメラを初めて受ける方
- パニック障害や嘔吐恐怖症がある
鎮静剤を使用せず、会話をしながら検査を受けたい方には、経鼻内視鏡が選択されることがあります。
検査中の会話が可能なため、質問をしながら胃カメラを受けたい場合は、鎮静剤なしの経鼻内視鏡が適しています。パニック障害や嘔吐恐怖症の方には経鼻内視鏡が向いていますが、稀に経鼻内視鏡でも嘔吐反射を伴うケースがあるため、これらの心配がある方は内視鏡の種類に関わらず鎮静剤の使用を推奨します。
まとめ
胃カメラ検査では、鎮静剤を使用することで検査時の不快感や不安が和らぐ場合があります。使用の可否や検査方法については、体調や希望を踏まえて医師と相談しながら決めることが大切です。
横浜駅前ひさゆき消化器内科・内視鏡クリニックでは、胃カメラ検査に関するご相談を受け付けています。検査について不安がある方は、医療機関へご相談ください。
記事監修者
横浜駅前ひさゆき消化器内科・内視鏡クリニック
院長・医学博士
久行 友和

経歴
- 2003年3月
昭和大学医学部卒業
その後昭和大学横浜市北部病院消化器センターとその関連病院勤務 - 2015年11月
昭和大学横浜市北部病院消化器センター 講師 - 2022年4月
昭和大学横浜市北部病院 人間ドック室 室長兼任 - 2023年11月
横浜駅前ひさゆき消化器内科・内視鏡クリニック 院長
資格
- 日本消化器内視鏡学会 学術評議員
- 日本消化器内視鏡学会 関東支部評議員
- 日本消化器内視鏡学会 指導医
- 日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
- 日本消化器病学会認定 消化器病専門医
- 日本内科学会 認定医
- 日本消化管学会認定 消化管専門医・指導医
- 日本医師会 認定産業医
- 日本大腸検査学会 評議員